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「…ふん。完全に壊れたか」
少年の目を覗き込んだあと、楽しげに、けれどどこか飽いた様に呟く。
せっかくの暇つぶしも、少年が壊れたことで終わったのだ。
何か新しい暇つぶしを探さなくては。ジークは興味を失うと、つまらなそうに少年を部屋から出した。
「………な……」
扉を閉めようと背を向けたジークの耳に、何かが聞こえた。
召使いが用事でもあって訪ねてきたのか、と振り返るが廊下には人影一つなかった。
少年は先ほど追い出されたまま、変化はない。
「…え…………」
ふいにまた微かな声がした。
それは壊れた少年から発せられていた。
少年の瞳に光はない。体もまた、自らの意思では動かさない。
けれど人形に成り果てた少年に残された、ちっぽけな思念が少年に話させる。
――――――帰らないと、と。
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