第9章:宴(前編)

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「ねぇマリア、何でなの」 知らず知らずの内に、表情が険しくなっていた。 それを緩めず、意図的に目を細めた。 「だって、嫌なのよ…」 先ほどまで確かに怒っていた筈のマリアが、弱々しい涙声で答えた。 毅然とした表情がクシャリと歪み、今にも泣き出しそう。 「このままじゃ、いつか壊れちゃうわ」 私たちの仲が、と小さな声でマリアは言った。 短い旅路だったけれど、マリアは本当に楽しそうに旅をしていた。 それが、こんな形で終わって欲しく無かった。 レンにも分かる、その気持ち。 マリアは2人の間に禍根が残らないように、そう思って問いかけてくれていたのだ。 (ごめん、マリア) 自分の事で手一杯だったのを、レンは酷く恥ずかしく思った。 「マリア、エル」 今度こそきちんと話す為に、レンは顔を上げた。 意識してゆっくり深く呼吸しているからか、落ち着いた声が出せた。
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