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早く帰りたかった。
今日は二週間ぶりに恋人と会う約束をしているのに・・・・・・。
業を煮やして私の方から先手を切った。
「あの・・・・・・電車の時間があるので、先に行ってもいいですか?」
なるべく不快を与えないようにと笑顔を作った私の顔を御幸さんは顔を上げて改めて見返した。
相変わらず口は噤んだままだった。
けれど返事をしてくれないので、私の方も少し帰り辛かった。
ようやく御幸さんが本題を切り出してくれたのは、そんなことを考えながら私が腕時計へわざとらしく視線を落とした時だった。
「その・・・・・・気に障ったらごめんなさいね。変な噂を聞いたものだから」
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