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俺、須賀誠(すがまこと)、31歳。 大きな工場で働くサラリーマン。 会社は一応、東証一部の大きな会社。 この会社に正社員として勤めて8年。 会社は東証一部なれど、現場で働く俺は、普段自分がその東証一部企業の一社員だと実感することがない。 何故なら、いわゆる3Kという劣悪な環境の中、汚れた作業服を着て毎日機械と向き合い、同じ仕事を淡々とこなすだけの日々。 東証一部=バリっとスーツを着込んだエリートサラリーマン、 なんていう俺のイメージとはかけ離れた現実。 大きい会社だけに、給料やボーナスはまぁ世間一般並みにもらえるし、 その他諸々の保証はされてはいるけれど、たまに、 『こんな仕事をしている俺は、本当に東証一部の社員なのか?』 とふと思う時がある。 高層ビルのオフィスで、バリっとスーツを着て、首からIDカードを提げて働く男に憧れたりもする。 でも、やっぱり俺は現場が似合う。 自慢は体力と、腕力。 頭を使うのは得意ではない。 敬語だの謙譲語だの、ビジネスマナーだの、よくわからない。 人前で喋るのも苦手だし、電話応対とか嫌い。 大きい声では言えないが、今時パソコンすら使えない。1日パソコンに向かって座っていては体がなまる。 結局俺にはデスクワークは向いてない。 現場で機械と向き合っているのが1番楽だ。 両親と妹、普通に仲の良いこの4人で実家暮らし。 毎日工場でせっせと真面目に働く俺は、その辺どこにでもいる、ごくごく普通の男である。
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