01・浅倉 アカネの場合

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「さっきユズルくんから連絡が来て、デートが中止になっちゃったみたいですぅ…」 「あぁ…なるほど。 他の女とデートの予定でも出来たのかしらね」 「ゆ、ユイちゃん…」 「…違うもん…」 俯いてながらも、至極低い声で呟くアカネ。 「ユズルくん、生徒会やってるから…その用事だって言ってたもん…」 『はぁ』、と、わざとらしくも盛大な溜め息を吐き出すユイ。 そして、おもむろにアカネの頭にチョップを落とした。 「痛ぁッ?!!」 「ユイちゃんッ?!」 「あら、ごめんなさい。 アカネの頭に、ハエが止まっていた気がして」 そのまま、前触れもなく…アカネと、帰り支度を済ませていたツカサの首根っ子を掴む。 「「…え?」」 「ツカサ、どーせ暇なんでしょう? アカネがね、頭にタンコブが出来て、痛くて痛くて仕方がないそうよ。 薬買いに行くの付き合ってあげてちょうだい」 「な、オレには関係な…っ、ちょ! 引っ張るな! 鷺沼、…」 暴れ、あらがう二人を気に留めることもなく…ユイは、軽々と二人を廊下に投げ出し、 満面の笑みで『いってらっしゃい』と告げると…そのまま、勢い良く扉をしめる。 「ひ、ひどいよー…ユイのバカぁ」 「…で、どーするんだよ」 「へ?」 床にへたりこむアカネの腕を掴み、立ち上がらせると…ツカサは、ぶっきらぼうな声色で呟いて。 その意図を計りかねているアカネは、きょとんと目を丸くする。 「『どーする』って…?」
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