01・浅倉 アカネの場合

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「…『薬』。 買いに行くんなら、さっさと行くぞ。 どーせ、デートは中止になったんだろ?」 「あ゛っ、あたしの話聞いてたの?!」 「あんな大声で話されたら、嫌でも聞こえるっつーの、バカネ」 「また言ったぁ! だから、あたしは…っ、」 トン、… 「『アカネ』、だろ」 頭に宛てがわれた、ツカサの掌。 …あれ。 ツカサの手って、こんなに大きかったっけ… 『…う、わ』 じわじわと上昇していく、頬の熱。 それを隠すように俯いて、ツカサの後ろを早足でついていきながら… 『どうか、気づかれませんように…』 ---------- 「って。 ツカサ、そっちは薬局じゃないよ?」 「知ってるっつーの。 どーせ、薬ってのはウソだろ? なら、オレの用事に付き合えよ」 「…何それぇ…」 不満げに口を曲げるアカネを尻目に、ツカサは『文句があるなら帰れ』、と一蹴して。 だが、今更引き下がるワケにもいかず…しぶしぶながらも、ツカサの横に並ぶ。 「あーあ、ホントならユズルくんとデートだったのになー…。 残念」 「…お前さぁ、」 「ん? 何?」 「アイツの…ユズルの、ドコがいいんだよ」 唐突な問い掛けに、アカネは驚きと羞恥を隠せず…。 人差し指同士を合わせ、口籠もらせながら…アカネは、小さく咳払いをして。 「そんな、改めて聞かれても…。 …でも、やっぱり…優しくて、一緒にいると楽しくて、…あと、笑顔も素敵で…、」
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