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「…『薬』。
買いに行くんなら、さっさと行くぞ。
どーせ、デートは中止になったんだろ?」
「あ゛っ、あたしの話聞いてたの?!」
「あんな大声で話されたら、嫌でも聞こえるっつーの、バカネ」
「また言ったぁ!
だから、あたしは…っ、」
トン、…
「『アカネ』、だろ」
頭に宛てがわれた、ツカサの掌。
…あれ。
ツカサの手って、こんなに大きかったっけ…
『…う、わ』
じわじわと上昇していく、頬の熱。
それを隠すように俯いて、ツカサの後ろを早足でついていきながら…
『どうか、気づかれませんように…』
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「って。
ツカサ、そっちは薬局じゃないよ?」
「知ってるっつーの。
どーせ、薬ってのはウソだろ?
なら、オレの用事に付き合えよ」
「…何それぇ…」
不満げに口を曲げるアカネを尻目に、ツカサは『文句があるなら帰れ』、と一蹴して。
だが、今更引き下がるワケにもいかず…しぶしぶながらも、ツカサの横に並ぶ。
「あーあ、ホントならユズルくんとデートだったのになー…。
残念」
「…お前さぁ、」
「ん?
何?」
「アイツの…ユズルの、ドコがいいんだよ」
唐突な問い掛けに、アカネは驚きと羞恥を隠せず…。
人差し指同士を合わせ、口籠もらせながら…アカネは、小さく咳払いをして。
「そんな、改めて聞かれても…。
…でも、やっぱり…優しくて、一緒にいると楽しくて、…あと、笑顔も素敵で…、」
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