01・浅倉 アカネの場合

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途中まで言いかけて、今更羞恥が込みあげてきたのか…アカネは、下唇を噛み締める。 …なのに、ツカサは… 「何だよ。 途中まで言ったンなら、ちゃんと最後まで言えよ」 「あ、う。 …それと、『可愛い』って…言ってくれるし、」 だって、ホントに好きだもん。 ユズルくんは、初めての彼氏。 ユイは、『初めてだから盲目になっているだけ』…って言ってたけど。 でも、好きだもん。 「…なら、」 「え?」 「お前のこと『可愛い』って言えば、アカネはオレを好きになるのかよ?」 「…え…」 腕を引かれ、路地裏の壁に押しつけられたかと思うと… 重なりそうな、距離。 「、ツカサ?!」 「…!」 アカネの首筋に見えた、『紅い痕』。 ふつふつと、腹の中で煮えたぎる…『ナニか』。 気づいたら、 「、ひゃ…っ」 「…」 その『痕』の隣に、…『もう一つの』… ゆっくりと…離れていく唇。 痛くて、恥ずかしくて、 …苦しい。 「、ツカサ…?」 こんな、…こんな気持ち、知らない。 「…ごめん」 「! ツカサ!」 謝罪の言葉を機に、素早く踵(きびす)を返すツカサ。 それを引き止めるべく、アカネは彼の服袖を掴んだのだが、… 「! …あ?」 「へ? どうしたの?」 「ッバカ、見んな!!」 「、え」 不意、視界が何か大きいモノで覆われる。 視覚が奪われた中で、ツカサの声が、いやに響いて…。
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