01・浅倉 アカネの場合

3/21
前へ
/70ページ
次へ
一つ一つ丁寧に、返事を携帯に打ち込むアカネ。 その表情は、かなりのマヌケ面だ。 「あーもうっ、メールで返事なんてまどろっこしい! ユイ、カレン、あたしちょっと電話してくるね! 先生来ちゃったら、適当に言い訳しといてっ!」 「はいはい。 いってらっしゃいな」 「あ、あの、ユイちゃん… ツカサくん、こっち睨んでますぅ…」 ユイの手を振る動作に見送られるがまま、アカネは『発信ボタン』を押して、そのまま廊下に向かって走っていく。 愛しの『ユズルくん』に、電話をかけるために…。 「…おい、鷺沼」 「何かしら。 眉間に皺なんて寄せちゃって」 「…ホント嫌味ったらしい女だよなぁ、お前って」 「お褒めにあずかり光栄ね」 …あわわ… お二人の間に、火花が散ってるですぅ…。 「…まだ別れてねェのかよ、アイツ」 「そりゃ、そうでしょ。 あの子は『ユズルくん』にぞっこんなんだから」 「、う」 「心配なら、アカネに直接言えばいいじゃない。 『あんな男じゃなくて、オレと付き合ってくれ』…って」 ユイの揶揄に、ツカサの頬は…一瞬にして紅潮する。 …高二にもなって初々しいというか、何というか…。 「かっ、かかか、揶揄うなよなっ! お…オレはッ、別に、アカネのことなんて…っ」 「…『アカネのことなんて』?」 その追い打ちに耐えかねてか…ボンッ、と、ツカサの頭から、羞恥の固まりがはじけるような音がした気がした。 「…ツカサ…、?」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加