4983人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
小さく息を吐き出して、肩口にある頭を軽く撫でる。
「何?」
「甘やかして欲しいんだろ?」
「ちぃがぁうぅー」
ようやく顔を上げる。
「私じゃなくて、ちゃんと緒方が好きになって付き合うであろう、彼女の話でしょ?」
「とりあえず、俺の初めての彼女は、お前って事になるけどな」
「そぉじゃなくて!」
いつも通り。に、とりあえずは戻って、何かしらの文句を言ってくる。
そう言えば、前に教室で居眠りしてた時も、泣いてたな、コイツ……。
「……解んねぇけど。お前のオトコも幸せなんじゃねぇの?」
「聞いてた?私の話。シャッターの向こうに入れて貰えなかったって言ったんだけど」
「だから」
「だから??」
ココロのシャッターがあるとして。
意識して他人に心を開かない事はあるとしても、無意識な状態で自分のソレが開いてるか開いてないかなんて解らない。
本人は開いてるつもりでいても、コイツには入れないと感じた。
それは、上っ面だけをなぞれば、相手のオトコが美羽を拒否していたように感じるのかもしれない。
でも、別の角度から見れば、コイツが、そこまで相手を想っていた証拠だ。
「お前、閉まってるシャッターなんざ、叩きまくってぶっ壊して入りかねないだろ?」
「…………失礼ね?流石に壊してまでは入らないわよ。ちょっと強めには叩き続けるかもだけど」
「だから、そういう事だろ?」
「え?私、今、緒方と会話してる???今、成立してる??」
コイツ、自分の普段の言動を棚に上げて、よくソレ言えたもんだな。
「相手のオトコの事は知らねぇけど、本人は、開けてたつもりだったんじゃねぇの?」
「……開いてなかった」
「開けてたつもりだったんだよ。きっと。大体、お前と付き合ってたんだろ?そう簡単な事じゃねぇって」
「何気に今、失礼な事言われてるよね?私」
いや、事実を言っている。
「とにかく。それだけソイツを好きだったんだろ?お前は」
それだけ想ってた。
自分の気持ちをぶつけるだけじゃなく、相手を想っていたからこそ、踏み込めなかった。
最初のコメントを投稿しよう!