一人ぼっちのクリスマス

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   外に出ると厚い雲に覆われる空に視線を向け、その空に向かって白い息を吐き出した。   「夜は雪が降るかな?」    誰に言う訳でもなく、ただポツリと呟いた言葉は、クリスマスを楽しむカップルや家族連れの声にかき消される。  本当に、今年は嫌なクリスマスになったものだ。  もし雪が降ったら、さすがの私でもたぶん泣いてしまうよ。    コートのポケットへと手を滑り込ませながら、笑顔が溢れている街を一人で歩く。  もう夕方だっていうのに、行き交う人の数は全然減ってなくて、そんな中を一人で歩くと余計に惨めに思えてしまう。    ――寂しい。   「はっ!? いやいや負けるな私! 毎年の事じゃないか!」    不意に頭によぎったワードを全力で否定する様に、頭をブンブンと横に振る。  両の頬をパンパンと叩いて、自分の家へと急いだ。
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