忘れぬ過去は雪景色

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  「ただいま……」    誰も居ない部屋に帰宅の挨拶を告げ、着ていたコートを適当に放り、無造作に置かれた会社の資料やファッション雑誌に目をやりながら、部屋の角にあるベットへと身を預けた。  そろそろ大掃除しなきゃなと思いつつ、ゆっくりと目を閉じる。    やっぱどんなに強がったって、寂しい事に変わりはない。  あの時から、今年でもう十一年だもんな。   ―*―   「引っ越し……?」   「そ、引っ越し。いやあ、ようやくお前の顔見なくて済むと思ったらせいせいするぜ」    高校二年のクリスマス、突如言い渡された幼馴染みの引っ越し。  別に付き合ってた訳でもないし、会えばいっつも口喧嘩してしまう奴だったから、あの時も口論になってしまった。   「それはこっちも同じだよ! アンタなんかさっさとどっか行けば良いじゃん!」
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