忘れぬ過去は雪景色

3/6
前へ
/60ページ
次へ
   違う、違う!  こんな事言うつもりないのに、なんで私ってこうなのよ!   「い、言われなくても居なくなりますよーだ!」    そう言いながら舌を見せるアイツを、何度も何度も叩いた。  でもその度に胸が痛くなって、涙が出そうになった。   「馬鹿馬鹿馬鹿!」    馬鹿なのは私だ。  いつも近くに居てくれたのに、素直になれずに怒鳴るばかり。   「朱鳥……?」    アイツが私の名を呼んだ時、私は大粒の涙を流していた。  なんで涙が出てるのか――その理由も分かってるくせに、それでもまだ本音が言えない。   「もうやだ……」    何度思っただろう。  素直な人間になりたいって。  何度想っただろう。  アイツに自分の気持ちを伝えたいって。    アイツを想えば想うほど、どうしようもなく好きだって気付けたのに、なにかが邪魔して言葉に出来ない。  そんな自分が、どうしようもなく嫌いだった。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加