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いつも歩いている商店街だった。
歩いていると、前のほうでピンクの髪をした少女が泣いていた。
沢山の人が慌ただしくうごめいている中、そのピンク少女は一際目立って見えた。みんなが、そいつを不思議と避けていたからかもしれない……いや、髪のせいか。
「…大丈夫か?」
普通、泣いてるやつを放っておけないだろう?
俺は、とりあえず横で泣いている少女に慣れない言葉をかけた。
「…あなた、優しいのね」
泣いていたと思っていたピンク少女は、顔をあげるとニッコリと笑った。
「こんなに荒んでしまった世界にも、あなたのような人はいるんですものね……あたしもしっかりしなきゃっ!」
なんてことだ…神は二物を与えないとはこのこと……こんなに可愛いらしいのに頭がおかしいだなんて!
そう哀れに思って、意味のわからない言葉を発したピンク少女に目を向けると、なんと消えかかっていた。
「はぁ!?」
向こう側にある八百屋が透けて見える。辺りを引っ切りなしに見渡したが、誰も驚いていないし気づいてすらいない。
わけもわからずまた少女を…いや、さっきまで少女のいた場所を見る。
「来年の今頃、また会おうねっ」
中学三年生の、春のことだった。
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