動きだす

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「まったくわからないよ。私も調べてはいるんだが、何も手掛かりなどないと思うんだが?」 香野はますます笑顔になって私に言った。 「やはり大野君も手掛かりなしなんですね。 大野君はまだ気が付かないですか? まったく手掛かりがない。つまり、手掛かりがないのが手掛かりなんですよ」 「言ってる意味がよくわからないんだが?手掛かりがないのが手掛かり?」 香野は新聞を読み終えたのか、それをテ―ブルに起き私を見て話しをした。 「そう、不思議なほどに手掛かりがない。普通ではありえない。では何故そこまで手掛かりがないのか?答えは簡単な事、襲われた銀行の誰かが強盗団の一味なんですよ。 そう考えると手掛かりがないという特殊な状況の説明がつきますからね。 きっと銀行に居る強盗団の一味が警察が来る前に手掛かりを全て消し去ってしまったのでしょう」 「ではまず銀行に居た者から調べればいいと?」 「そこまで範囲は広くないんだよ。銀行に勤める者、それも何かの役職につくような偉い立場に居る者ですよ。 でなければ、そうやすやすと手掛かりを消し去る事などできない。つまり銀行の中を自由に動き回れなければ不可能な事なので自然とそうなるんですよ」
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