毛を逆立てる猫

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    「お。ひなたぼっこか? おまえ、いいな。気楽そうで。」     ん?なんだ、こいつ。うるさい男だな    「一日中、好きなことばっかしてんだろ? 好きなもん食って 好きなとこで寝て 好き勝手に散歩して   あ~ぁ。 おまえ、いいなぁ。」    ? こいつ、本気で言ってんのか。 好きなもんどころか、鼠の一匹すら見つからなくて…もう3日雨水だけだぞ。  好きなとこで寝る?だいぶ寒くなってきて、凍え死ぬかもしれないのに…外で寝たいのか?いかれてる。 はぁ?散歩だ?こいつらは縄張りがないから、こんなこと言えんだな。     「俺さ、これから下げたくない頭下げに行かなきゃなんない訳。 それが仕事だからさ。 おまえは働かなくてもいいし、なんか自由だよな。   あ~、俺も猫になりてえぇ」   昨日の喧嘩のせいで、大事な毛皮に傷を負っちまったぜ。ちゃんと舐めとかなきゃな… お前の軽い頭下げるだけなんだろ?なにが嫌なんだ?俺たちは時に命がけで、縄張りを守って戦うぞ。どっちかが降参するまでな。 おまえはいいな、お気楽でw        「うわっ!いて。 なんで引っ掻くんだよ、ちょっと触ろうとしただけじゃんか… ちぇっ。やっぱついてねー。」   俺は毛を逆立て威嚇した! なんだこいつ!気安く触るんじゃねえ! ふぅ、殴られるかと思ったぜ。 人間は危険だからな。俺たちの仲間が攫われたり、切り刻まれたりするからな。 こいつがいなくなるまで、ここに隠れるか。       「猫にまで引っ掻かれて、カミサンにも噛み付かれて。 たまには俺も、猫みたいにのんびりしたいもんだ。」   「はぁ。 頭下げに行くか…。」   行ったか。 あいつ気楽でいいなぁ。食うもんも、寝るとこも、家族も、ちゃんとあるのにな。  俺のなにが羨しいんだ? 不思議な生き物だな。 まぁ俺も、ちょっと人間が羨ましいぜ。    さてと。 自由に暮らすためにも、見回りに行くか。  そろそろ飯にありつかんと、動けなくなっちまうからな。    なんて 不自由なんだ     
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