残高が足りません

落ちる男

──AM08:09　

今考えれば、その日はいつもと少し違っていたように思う。
いつもなら、携帯のアラームが何度も某アニソン(一子相伝の暗殺拳を使う、お前はもう──なんたらって言う人の歌)を鳴り響かせ、１回目のそれでも起きず、１０分毎に計４回も鳴って…やっと起きれるほど寝起きの悪い私。
その私が何故か、アラームが鳴る前に目が覚めた。
いつもの習慣で、枕元に置いてある携帯を手探りで探し、アラームを止めようと思って掴んだ。

──あれ？

いつもなら、けたたましく鳴り響いているはずの携帯が…余りにも静かなので、一瞬で全身から血の気が引いた。
掛けていた布団ごと物凄い勢いでベッドの上に起き上がった。

─寝坊した！

慌てて携帯を開き、時刻を確認する。
ディスプレイには　

12月15日　08:09

と写し出されていた。