色褪せた小さな靴

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ここに色褪せた小さな靴がある 以前この靴は人間を嫌っていた。雑に履きふるされ、亡くなっていく仲間を見てきた。靴に生まれてきた運命にすら心底うらんだ。 店に置かれている靴。男の子が手に取り確かめ連れて行く。 靴は覚悟たるものを決意した。 しかし靴は毎日不思議なことに気がついた。 靴を履いたその晩には必ず白いクリームと布切れで拭われる。 次の日も。その次の日も 次第に靴は履き歩くことに幸せを感じていた 公園、遊園地、学校… 男の子との大切な思い出と共に歩き続けた しかし3年が過ぎ、靴は歩き疲れた。 どんなに白いクリーム、布切れで拭っても… いつものように学校の下駄箱で男の子を待つ靴 しかし男の子は帰ってこない 靴はその現実を受けとめることができた そして靴は深い眠りについた 宛のない帰りという夢を描きながら 幸せを運ぶ小さな足音を ここに色褪せた小さな靴がある ある男性と家族の靴箱に いつまでも男の子との思い出と共に静かに眠りながら
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