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あれは…
私が、小学校五年生の頃…
新学期を迎えた私は、理由も分からず学校で同級生から虐めを受けていた。
私は、家に帰りたくなかった…
家に帰れば、明日はまた学校。
どんな虐めが待っているのか…
苦しみと恐怖で、私は遠くに逃げたい一心だった。
そんな憂鬱なまま、ランドセルを背負って気づけばとなり町まで歩いて行った。
日は、次第に落ちて空が赤く染まる。
小高い丘を登ると一本の桜の木を見つけた。
太く高い木に圧倒されながら、ハート型の花びらが静かに落ちて行く様を見つめている。
足に貼りつけた絆創膏に、その花びらがつく。
泥だらけになったスカートが目に入った瞬間…私は苦しみを思い出す。
切なさのあまり、涙が止まらない。
悲しくて…切なくて…
私は、気づけば桜の木の下で大声を上げて泣いていた。
「君…どうしたの?」
桜の木の影から、私と同じ年位の男の子が本を抱えて現れた。
私は、見られた恥ずかしさから思わず逃げ出そうとした。
すると、その男の子は慌てて私の手首を掴んだ。
「どうして逃げるの?僕、君に悪いことしたのかな?」
その男の子は、不思議そうに問いかけた。
その問いかけに私は首を大きく横にふった。
すると彼は満面の笑みを浮かべ…
「良かった。」
っと、言った。
その笑顔が眩しくて、私は思わず目を細めた。
「少しお話しようよ。僕も退屈していたんだ。」
そう言って、桜の木に寄りかかって手招きをした。
私は、彼と少し離れて隣に腰掛けた。
彼と話はじめて空が蒼く変わる頃…私は彼と馴染んでいた。
そして彼に私が虐められていることを話すと彼の表情は一変した。
「そうだったんだね…そんな理不尽な世の中だから可笑しいんだ。それを先生達は知っているの?知ってても知らないふりしてるんだろうけど…。自分の内定の為に見て見ぬふり…。終いには虐められてる方を責める理不尽な行動。僕は許せない。」
そう言って彼はムクッと立ち上がった。
そして優しく私に手を差しのべた。
その手に吸い込まれるように私は彼の手を取った。
すると彼は私をグイッと引き寄せた。
そしてまた彼は笑顔に戻ると桜の花びらを一枚私の手のひらに乗せた。
「君が強くなるんだ。そんな虐めっ子達に負けたらダメだよ。大丈夫。僕がついているから。」
っと、優しく微笑んだ。
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