6th Attack Pinch Runner

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(S15のエンジンから微かにだけど、不協和音が出ている。 絶対音感を持つ私の耳に間違いはない。 おそらくメンテナンスを怠った状態でずっとバトルを吹っ掛けてきたんだわ。 このまんまだと、S15は確実に息絶える!!) クルマのエンジンという物には機械である限り、必ずメンテナンス、つまり『手入れ』が付いて回る。 特に高出力等を誇る高性能エンジンや、手を入れたチューンドエンジンはマメなメンテナンスや、繊細な取り扱いを要求する物が多い。 実は芹華は優れた絶対音感を持ち、通っている音大で輝かしい成績を修めている。 その芹華の耳がS15の隠れた不調の芽を捕らえたのだ。 実際、S15の女は走る事だけに傾倒し、メンテナンスはおざなりにしてきた。 三ヶ月又は三千キロが目安であるオイル交換さえいつしたか記憶に無い位だ。 適正な手入れもされず酷使されてきたエンジンが悲鳴をあげ、限界を迎えたとてなんら不思議はない。 一方、こちらはS15の女。 「ハハハ、今日も絶好調、ゴキゲンだぜ!!」 エンジンの悲鳴に全く気付いていなかった。 芹華の耳がキャッチした不協和音は僅かだったため、普通の人間の耳にはなかなか捉えきれないものだが、だからこそ日頃のメンテナンスが必要なのだ。 女は更にS15にムチを入れる。 それが確実にS15と自らの首を絞めるとは知らずに。
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