第二十五章 葬送あるいは月世界渡航

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前頁解説。 〝般若心経〟は釈迦が弟子の舎利子(シャーリプトラ)に語りかけるスタイルで記されている。 〝この世においては、物質的現象には実体はなく、実体がないからこそ、物質的現象でありえる〟 〝実体がないという立場においては、物質的現象も、感覚も、表象も、意思も、知識もない。眼の領域から意識の領域にいたるまで、ことごとく、ない〟 〝さとりも、迷いもなく、さとりがなくなることもなければ、迷いがなくなることもない。苦しみも、苦しみを制する道もない。 知ることもなく、得るところもない。 それを覚った諸々の求道者たち(菩薩)は知慧の完成により、心を覆われず、永遠の平安の境地にある〟 〝過去・現在・未来の三世にいます目ざめた人々(三世諸仏)は、すべて、この上ない正しい目ざめを覚りえられた〟 といった旨が説かれている。 〝羯諦羯諦波羅羯諦 波羅僧羯諦菩提薩婆訶〟 は、サンスクリット(古代インドで用いられた言語)の ガテー ガテー パーラガテー パーラサンガテー ボーディ スヴァーハー を音訳したもの。 大いなるさとりの真言として説かれている。 正確な訳は困難であり、また、古来より訳さないこととされている。 中村元氏が、参考のための一訳として著書に掲載した訳を紹介する。 〝往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、彼岸に全く往ける者よ、さとりよ、幸あれ〟 参考文献『般若心経 金剛般若経』(中村元・紀野一義 訳註 岩波書店 2016年9月5日 第77刷) 般若心経本文ならびに読経ルビは、高野山真言宗長善寺様ホームページ、ウィキソース『般若心経』(原典は小林正盛編『真言宗聖典』)を参考としました。
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