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・・・いいえ、それは兎も角。
これでは折角の法会が台無しだわ。
一体どんな名句を用いれば、此の悲劇を大団円へと導く事が出来るかしら?
参列者たちの理想に適う奇跡を顕現せしめる虹色の鍵は、どうやら絡繰仕掛の神の託宣に他ならないらしいわね。
月世界の風光に浸って等閑にしていた宰領の務めを果たすべく、青嵐尼の傍へと歩を進めんとした正にその刹那。
誰かの腹の虫が寂寞を引き裂き高らかに吼えた。
「ああら。これは御免あそばせ。ほほほ、お腹が空きましたわあ、あたくし。綾乃先生もそうではなくって?
セリーヌ、いい加減に御導師様を放しておやりなさいな。本当に不可ない時代だわ。験を求めずには信じられない、だなんて。貴女も存外に即物的なおつむの持ち主なのねえ?
ほら、ジュスティーヌ。エロイーズ。貴女達も腹ぺこなんでしょう?
今更etiquetteも何もありゃしないわよねぇ。さっさと御馳走になりましょうよ。宜しくって、先生に家令さん?
・・・ああ、そうだわ。存外、ディアーヌもお料理が楽しみなのかも知れないわねえ。
あの子も空腹の儘では天に還れないのだわ。ええ、きっとそうよ。最後の晩餐を欠食だなんて、イエス様より酷い受難ですものねぇ」
腹の虫の飼い主─マリアンヌ嬢は、私達の視線を一斉に浴びてなお素知らぬ顔で傲然と佇み、夜会の余興の拙劣さを託つが如き調子で御斎の潮なるを訴えるのであった。
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