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樹里は駅前に着くと、1軒しかない居酒屋までの500メートル弱を、歩を緩めて歩いた。
頭の中で、色々な想像が沸き上がる。
こういう時、悪い事しか思いつかないもので、実際樹里の頭の中は、健太郎が女と一緒に居る所や、その女と仲良さそうに話している所しか思いつかなかった。
1歩1歩近づいてくる居酒屋を前に、樹里は前日健太郎が卓に言った言葉を思い出そうとした。
『俺は!俺は絶対!死んでもあんたみたいなヤツになりたくない!守ってあげられないなら、少しでも支えてやる!!支えてもあげられないなら、一緒に考えてやる!!そういうのが結婚じゃねぇのかよ!!』
あの言葉に、嘘は無かったと信じたい。
今日のメールも、自分の考え過ぎであってほしい。
そうでなければ、健太郎の何を信じていいのかわからなくなってしまう。
結婚を考えた、自分が情けなくなってしまう。
樹里は、祈るような心境になっていた。
気が付くと、もう目的の居酒屋まで10メートル程度まで近づいていた。
鼓動が早まる。
不安で、目が潤い始めた。
居酒屋の目の前に着いた樹里は、ゆっくりとのれんの隙間から、中を覗いた。
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