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数日間会社を休んだ健太郎は、金曜日になってやっと出勤する事ができた。
4日間の間に、内海と武田が見舞いに来た。
2人は、何度も健太郎に頭を下げた。
失恋をすると、辛さからか人のせいにしたくなる事が多い。
しかし、自分の非を認めない限り、そこに成長はなく同じ事を繰り返す。
最初は、健太郎自身も2人のせいだと思っていたが、結局嘘をついたのは自分なのだと諦めた。
そうしなければ、前に進めないと知っていたからだ。
会社に出勤したのだって、いつまでも殻に籠もってるワケにもいかないからだ。
何かきっかけが必要だったし、内海と武田の罪悪感も取り除いてあげなければならなかった。
「もう…大丈夫…なのか?」
内海は申し訳なさそうに問い掛ける。
「ああ。大丈夫だよ。」
「あの…本当すいませんでした。」
武田が頭を下げる。
「気にするなって。俺の性格じゃあなるべくしてなった結果だ。」
そうは言っても、といった顔で内海と武田は俯いた。
健太郎は、自分が辛がっている姿を見せてはいけないと笑顔を作ったが、その笑顔は内海達を余計に苦しめた。
「三山君!」
部長の怒鳴り声にも似た呼び声がオフィス内に響く。
「はい。」
「君の彼女が働く出版社は?」
部長は焦ったように、早口で問い掛ける。
「いや…彼女とは…」
「いいから!どこだ!?」
健太郎の言葉を遮り、部長は怒鳴り散らす。
「栄光出版ですけど…」
「やはり…。」
「あの…何か?」
部長は雑誌を、健太郎に渡すと口を開いた。
「今日、栄光出版の雑誌から我が社の『KENZEN冷パスタ』の中に有害保存料が混ざっていた疑いをスッパ抜かれた。」
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