夜を駆けて

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ボクは小さな田舎町に住む井の中の蛙。      外の世界たる大海はあまりに広く、深く思えた。        多分、一生知ることはないのだろう。蛙として暮らすのがボクにはお似合いだ。    その時は、そう思った。             シダケタウンに帰って数日が過ぎた頃、サファイアさんがやってきた。      ミツル「あ…サファイアさん。どうしてまたこの町に?」      サファイア「ん?いや…特に目的もなくふらっと。いやしかしいい町だな。」     あれ以来軽く落ち込んでいたボクは上手く話をすることさえできずにいた。      サファイア「あれ?あの洞窟は?」      ミツル「ああ…カナシダトンネルのこと?洞窟の中のポケモンへの影響を考えて開発が中止になってるんだよ。でもミチル姉ちゃんの彼氏のケンジさんが1人でトンネルを掘り続けてる。」      サファイア「ふーん……そうなんだ。面白そうだな、案内してくれるか?」      ミツル「え?いいけど…」       ボクはサファイアさんを連れてカナシダトンネルの中に入った。      短いトンネルの途中、大きな一枚岩がカナズミとシダケを隔てていた。      ミツル「あれ、ミチル姉ちゃんだ。」            ミチル「……ケンジさん、もうやめて!あなた1人で頑張ったって……こんな大きな壁破れっこないわ。」       すると壁の向こうからかすかながら声が返ってきた。    ケンジ「………たとえ破れなくとも…少しでも君に近付けるのなら。僕は。掘り続けるよ……痛ッ…くっ」       ミチル「うぅん、いいの。こうしてあなたの声が聞けるだけで十分だわ……だから……もう……」        ミツル「ミチル姉ちゃん……」     サファイア「いい話だな~……っと!とまぁ眺めるのはこの位にしますか。それ、アサナン!!」    ボンッ    サファイアさんが投げたボールから、格闘タイプの小さなポケモン、アサナンが飛び出した。      ミツル「え!?どうするつもりなの?」      サファイア「まぁ見てなって。ミチルさんだっけ?そっから離れて。」      ミチル「え?あ、はい……」      アサナンは岩の前に立ち、目を閉じた。      サファイア「いわくだき!!」    アサナンは目を見開き、小さな拳を一枚岩にぶつけた!!
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