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小さな小さな歌声が聞こえたのは、藍色の闇が紺碧に変わり行く時間だった。
波に漂い海藻のゆりかごに隠れていた私に届いた歌声。
もうすぐ15年という最初の節目を迎えた人魚の歓喜の歌だった。
長い長い年月この海域を泳ぎ、いくつもの海の精霊たちを見てきたが、あのように陽の光を感じさせる歌声は初めてだった。
人魚の王の幼き娘は、海の底にありながら、私たちが焦がれる太陽のような少女の精霊だった。
城を飛び出し、好奇心を持っていろいろな生き物に触れていく。
軽やかな歌声を波に乗せながら。
その歌声に海の生物達が誘われ活力を増してゆく。
その幼い好奇心でありとあらゆるものに触れ、驚き喜びそのすべてを歌に乗せ、軽やかに海を泳ぐ。
舞うように…。
海の惠の象徴であり、その具現者は、私の住む海域に華やかな賑わいをもたらした。
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