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ある日、幼い人魚は私の元へとやってきた。
「あなた、すっごい大きいのね。」
そう言うとくるくると私の周りで回りだす。
「それは、鯨だからね。」
「へぇー鯨ね…。」
「よろしく鯨さん。」
「ああ、よろしく、おちびの人魚ちゃん。」
「もう、あなたから見たら誰でもおちびでしょ。」
ちいさなほっぺをプーっと膨らませて、幼い人魚が言う。
「ははは、そうだな。」
人魚は私の身体を恐る恐る触ってくる。
「硬い…鯨さんって強そうだね。」
「まあ、そうかもしれないね。」
「じゃあ。私に怖いことが起きたら守ってね。」
「ああ、いいよ。海の精霊様の頼みだ。約束するよ。そのかわり私たちにいっぱい歌を聞かせておくれ。」
「うん。約束ね。私、歌うの好きだから、いっぱい歌う。」
そう言うと、舞うように海中を泳いでいき、歌を歌い始めた。
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