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人魚が魔女の呪いにより泡になる瞬間が勝負だった。
魔女に、人魚の変化した泡のひとかけらも渡さず。
私たち海の生物が取り込む。
魔女はもちろん抵抗したが、魔女の呪いは泡になるまで…
その泡がどうなるかまでは、縛られていなかった。
人魚の歌を聴き、喜び。
人魚の舞を見、癒され。
弱肉強食の生の営みの中で、生きる力を与えられていた、私たち海の生物は、力をあわせた。
一つ一つの力は弱くとも、すべての生き物がその人魚のために力をあわせた。
魔女を妨害し、人魚の泡をすべて、海の生物が取り込んだ。
救いは、人になった幼き人魚が人を殺めなかった事だ。
殺めてしまえば、人魚に戻れても、精霊として魂の清らかさを失い、二度と目覚めることは出来なかっただろう。
そうなれば、魂の穢れた精霊は、朽ち、魔女のいい餌食となるところであった。
どちらにせよ、魔女の手に精霊の力が奪い取られる、恐ろしい罠だったのだ。
人魚が泡になる瞬間、剣も契約を失い、人魚達の元へ力となって戻ってゆく。
魔女も契約のない出来事に手を出すことができず、闇へと帰っていった。
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