序章――誕生

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「御主人様!」  一人の女性が、木造建築の長い屋敷の廊下を、慌てた足どりで走ってくる。  廊下の突き当たりに一つの部屋があった。  障子の戸を開くと、壁に背を当て、うつらうつらとしている男性がいる。  この屋敷の主人らしい。  商人のような白い着物を着て、髭を蓄えた顔の男性である。 「産まれたか!?」  男性は突然元気になり、部屋に入ってきた女性に問い掛ける。 「はい! 元気な男の子にございます!」 「そうか、顔が見たい! すぐに行く!」  男性は部屋を飛び出し、好奇心旺盛な子供のような急ぎようで廊下を駆け抜けた。  二回ほど廊下を曲がり、やがて突き当たる壁から二つ目の部屋に飛び込む。  
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