序章――誕生

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「あなた……」  男性の妻らしき女性は、夫の剣幕に驚いている。 「産まれたとな!? 赤子の顔を見せてくれ!」  妻である女性の付き人が、大切そうに、布でくるまれた産まれたばかりの赤ん坊を渡す。 「おおっ、こやつか! なるほど、強そうな顔をしておるわ! やがて神羽一の猛者になるに違いない!」  男性の喜びは異常なくらいだった。 「攻洋(こうよう)様の息子さまでございますから、さぞご立派な息子様になられることでございましょう」  付き人が笑顔で言う。 「あなた、名前はいかがいたしましょうか?」  妻が布団の中から、疲れきった声で問い掛けると、夫はそれに力強く答えた。 「もう決めてある! この国が戦乱の時代に活躍した天将と言われる男、蒼劉(そうりゅう)より一文字頂き、劉! それがこの子の名よ!」 「攻劉(こうりゅう)……よい名前にございます。きっと立派に成長なさるでしょう」 「よーし、酒を出せ! 祝いじゃーっ!」 …………。 ……。
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