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「わかった。でも、今度は大丈夫」
どこか自信ありげに言った紫苑は、ストンと俺の隣に座った。
「どうだかな」
からかうように言うと、すねたような顔をした。
「今日は仕事だろ?」
テレビを見るのをやめて、俺は出掛けるために着替えはじめた。
「うん。紳、どっかいくの?」
背中に感じる紫苑の目線から、おそらく寂しそうな目で俺を見ているだろうと予測する。
「ああ…ちょっとな。お前が帰るまでには帰る」
香水をつけて振り返る。
紫苑はまだソファにいた。
いつもなら後をついて回るくせに。
「じゃあな」
玄関で靴をはく。
後ろでパタパタと静かな足音が聞こえた。
「行ってらっしゃい」
俺は黙って彼の頬にキスをした。
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