331人が本棚に入れています
本棚に追加
樹「ばっ、馬鹿な真似はよせっ!頼むから落ち着いてくれッ!!」
女生徒「?」
2つ目のサプライズは、彼女が
靴を履いていないこと。
しかもあと一歩前に踏み出せば、屋上から校庭へ一瞬で移動できる
ような位置に立っている。
靴を脱いでフェンスを乗り越え、落ちるか落ちないかの瀬戸際に
立っている女生徒。
これではもう、何をしようとしているのか改めて訊く必要はない。
樹「スゲェ面白いマンガを貸してやるから!メシだって好きな物をオゴッてやる!」
女生徒「………」
琥珀と深紅の双眸が俺を捉えた。
その視線に思わず怯みかけたが、真剣な眼差しで視線を返す。
樹「だから自殺なんてよせ!! 親御さん泣くぞ!? たぶん俺もビビッて泣くぞ!?」
自分でも頭の何処かで、情けない説得だとは気付いているんだが、そんな事は構っちゃいられない。
今は一刻も早く彼女をフェンスのこっち側に連れ戻さなくては!!
樹「アンタみたいな綺麗な娘ならもっといい男が見つかるさ!!
なんなら俺が彼氏になって幸せにしてやっても……」
って、ちょっと待て、俺!
フラレたってなぜ決めつける俺!
口説いてどーする、俺!
あの娘を落ち着かせる以前に俺が落ち着け、俺!!
樹「……ちょっとタイム。10秒待ってくれ」
女生徒(こくん)
俺は女生徒が頷いたのを確認し、おもむろに両腕を振り回しながら深呼吸を開始した。
樹「すぅ~~はぁ~~」
女生徒「……」
樹「すぅ~~はぁ~~」
女生徒「………」
全っっっ然ダメだ。
こんなんじゃいくらやっても動悸・息切れが収まらない。
樹「救心、持ってない?」
女生徒(ふるふる)
女生徒は長い髪を揺らしながら
首を横に振る。
樹「そうか……なら仕方ない。
すぅ~~はぁ~~」
無い物ねだりしても仕方ないので深呼吸を再開した。
女生徒「……あの。もう、10秒経ちました」
静かに、透き通る様に虚ろな声で女性徒はそう言うと、白くか細い
腕につけた腕時計を見せてきた。
ウサギを型どった可愛い時計だ。
樹「悪い、まだ全然落ち着いて
無いんだ!10秒延長!」
女生徒「………。分かりました」
樹「すぅ~~はぁ~~」
女生徒「……あの」
最初のコメントを投稿しよう!