「唄う少女」

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樹「ばっ、馬鹿な真似はよせっ!頼むから落ち着いてくれッ!!」 女生徒「?」 2つ目のサプライズは、彼女が 靴を履いていないこと。 しかもあと一歩前に踏み出せば、屋上から校庭へ一瞬で移動できる ような位置に立っている。 靴を脱いでフェンスを乗り越え、落ちるか落ちないかの瀬戸際に 立っている女生徒。 これではもう、何をしようとしているのか改めて訊く必要はない。 樹「スゲェ面白いマンガを貸してやるから!メシだって好きな物をオゴッてやる!」 女生徒「………」 琥珀と深紅の双眸が俺を捉えた。 その視線に思わず怯みかけたが、真剣な眼差しで視線を返す。 樹「だから自殺なんてよせ!! 親御さん泣くぞ!? たぶん俺もビビッて泣くぞ!?」 自分でも頭の何処かで、情けない説得だとは気付いているんだが、そんな事は構っちゃいられない。 今は一刻も早く彼女をフェンスのこっち側に連れ戻さなくては!! 樹「アンタみたいな綺麗な娘ならもっといい男が見つかるさ!! なんなら俺が彼氏になって幸せにしてやっても……」 って、ちょっと待て、俺! フラレたってなぜ決めつける俺! 口説いてどーする、俺! あの娘を落ち着かせる以前に俺が落ち着け、俺!! 樹「……ちょっとタイム。10秒待ってくれ」 女生徒(こくん) 俺は女生徒が頷いたのを確認し、おもむろに両腕を振り回しながら深呼吸を開始した。 樹「すぅ~~はぁ~~」 女生徒「……」 樹「すぅ~~はぁ~~」 女生徒「………」 全っっっ然ダメだ。 こんなんじゃいくらやっても動悸・息切れが収まらない。 樹「救心、持ってない?」 女生徒(ふるふる) 女生徒は長い髪を揺らしながら 首を横に振る。 樹「そうか……なら仕方ない。 すぅ~~はぁ~~」 無い物ねだりしても仕方ないので深呼吸を再開した。 女生徒「……あの。もう、10秒経ちました」 静かに、透き通る様に虚ろな声で女性徒はそう言うと、白くか細い 腕につけた腕時計を見せてきた。 ウサギを型どった可愛い時計だ。 樹「悪い、まだ全然落ち着いて 無いんだ!10秒延長!」 女生徒「………。分かりました」 樹「すぅ~~はぁ~~」 女生徒「……あの」
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