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樹「ほら」
───その後。
どうにか落ち着きを取り戻した
俺は、屋上にある自販機で飲み物を2本買うと、ホットのミルクティーを差し出した。
女生徒「………!」
女生徒は一瞬、わずかに驚いた
そぶりをみせたが、
女生徒「あ……。ありがとう……ございます……」
震えた手で恐る恐る缶ジュースを受け取った。……別に、毒なんか入ってないって。
(カコン)
緑茶のブルタブを片手で開け、
口へと運ぶ。
樹(ずずーっ)
ふむ、美味い。
じきに雪が降るこの季節、寒空の下で飲む暖かいお茶は何十倍も
美味く感じるから不思議だ。
樹「ん?」
ふと、視線に気付くと。
女生徒(じぃ~~……)
女生徒が、俺の手元をじっと見ていた。
樹「緑茶の方が良かったか?」
あまりに真剣な目で俺を見ているため、沈黙に耐えられずに訊いてみると、
女生徒(ふるふる)
女生徒は小さく否定して、片手で缶ジュースのブルタブを開けた。
樹(? 俺のマネをしたのか……今の?)
「器用だな」などと思ったのも
束の間だった。
女生徒は開けた缶ジュースを、
どことなく気品が感じられる様な仕草で口に運ぶと、
女生徒(ずずーっ……)
よりにもよってミルクティーを、日本茶みたいに音を立ててすすりながら飲み始めた。
樹「………。ま、いいけど」
女生徒「?」
俺の呟きに不思議そうな顔をした女生徒を無視し、
樹(ずずーっ……)
再び緑茶を煤る俺。
女生徒「…………」
そして俺の呟きの意味を無視することに決めたのか、再び缶を口に運ぶ女生徒。
樹&女生徒
(ずずず~~~~っ……)
暫しの間、お互いの茶を煤る音が絶妙なハーモニーを奏でた。
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