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そんなこんなで緑茶を半分ほど
飲み干したところで。
俺は女生徒に、なんであんな所に居たのかを尋ねる事にした。
樹「なぁキミ。ところで、なんであんな危険な場所に居たんだ?
飛び降り自殺ってのは俺の勘違いだったみたいだが」
女生徒「!」
突然話しかけられて驚いたのか、それとも訊かれたくない事だったのか。
女生徒は一瞬眉をひそめて、僅かばかりの驚きの表情を見せる。
樹「歌ってたみたいだけど?」
なにか引っ掛かりみたいなモノを覚えつつも、続けて女生徒を問い詰める。
女生徒「その……。誰にも聞かれない場所で、ひとりで歌の練習をしたかったので……」
樹「……ふーん。人に見られると恥ずかしいから、誰にも見付からないようにあんな所で?」
女生徒「……はい」
樹「…………」
恐らく、嘘だな。
そう語った女生徒の顔はポーカーフェイスを保ったままだったが。
一瞬その異色の瞳が、俺の言葉
から逃げ場を探すみたいに反れていた。
確かに歌を歌っていたのは知っている。
だが、練習しているところを人に見られるのが恥ずかしいからってわざわざあんな所に?
そんなハズはない。俺が来るまでここには彼女1人しか居なかったのだから。
樹(……なるほどな)
たぶん彼女は、俺のような見ず
知らずの誰かではなくて、彼女を知ってる「誰か」に見付からないようにする為に、あんな所に隠れていたんじゃないのか?
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