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───悪夢は苦しく。
そして悲しい。
だから、目を覚ました。
樹「………」
まず目に入ったのは、色褪せた
畳に置かれた、小さなちゃぶ台。
さらにその上には昨日の夜、
午前2時まで睡魔と戦いながら
組み立てた、新しいパソコン。
樹「……ああ、やっぱり」
そして目覚めた時にはいつも
7時50分を正確に指している、冷酷無比な目覚まし時計。
樹「たまには気分爽快に目覚めてくれよ、俺……」
俺は睡眠不足で上手く纏まらない思考のまま、ここ最近の日課に
なっている独り言を漏らすと、
(ドンドンドン!)
激しく殴打されるドアの音に
急かされ、上半身を起こした。
菜摘「もう、いつきぃ~~!!
早く起きなってばぁ!!
い~つ~きぃ~~~~っ!!」
樹「あ~~もう、うるさい!!
起きてるって!少しぐらい待てないのか!?」
借金の取り立ての如く叩かれる
玄関のドアに叫ぶと、カーテンの
レールに掛けてある制服を剥ぎ
取り、身に纏う。
菜摘「アンタ、私がいつからドア叩きながら叫んでるか分かって
言ってんの!?20分も前からよ!?もうドアはベコベコ、喉は
ポリープ出来そうよ!!」
……なんて近所迷惑な奴なんだ、コイツ。
よくもまぁ、近隣住民から文句のひとつも言われなかったもんだ………と驚いてるうちに、ようやくドレスアップは完了した。
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