「俺達の日常」

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樹「ごめんなさい」 菜摘「……ま、分かればいいわ」 ここは時間も無いんだし、謝って穏便に済ませるしかないハズだ。 ……うん。 菜摘「まったくもう!ほら、またアンタのせいでギリギリじゃない……さ、とっとと走るわよ!?」 樹「サー・イエッサー!」 一部分だけ妙に面積の膨らんだ 頭を撫でつつ、靴箱の上の写真 立てを一瞥する。 樹「………。行ってくる」 俺は鍵を掛けると、原付並の速度で爆走する菜摘を追い掛けた。 菜摘「はぁっ……はぁっ……」 樹「ふぃ~~。走った走った」 ───学校に到着。 時刻は8時24分。ホームルームまではまだ5分近くある。 まったく、菜摘が今まで1度も 俺を陸上部にスカウトしないのが不思議なくらいの好タイムだ。 菜摘「なんで……アンタ…そんな余裕……?」 ゼィゼィと苦しそうな呼吸の合間に、菜摘が納得の行かないような顔で疑問の声をあげる。 樹「さあ……?お前にいつもブン殴られてるから、丈夫に出来てんじゃないか?」 ま、如何に菜摘が陸上部のエース兼部長といえ、あれだけ追い着き追い越されるデットヒートを繰り返せば、こうなるのも当然だ。 樹「言っとくが、だからと言って感謝なんて微塵もしてないぞ? お前のパンチを食らって、15の若さで前歯が2本も人工になったことあるし」 菜摘「……うっさいわね。 とっくに新しい歯が生えたんだしもう時効でしょ?」 樹「馬鹿言うな。いずれ治るなら腕をヘシ折っても罪にならないっていうのか?」 菜摘「ぐっ……!?ほ、ほら!! とっとと教室いくわよ!」 樹「……はいはい」 流石にやり過ぎたと自覚しているらしく、菜摘はバツの悪そうな 顔で話を打ち切ると、 菜摘「ほら、樹!せっかく走って間に合ったのに、立ち話して校門閉まっちゃたら意味ないわよ!」 俺を置いて、そそくさと玄関へと歩き出した。 樹「へいへい」 ──菜摘に叩き起こされ、菜摘と走って登校し、いつもギリギリに到着し、一日が始まる。 樹「……まあ、結局」 一ノ瀬 樹の日常はなんの変化も無く、今日もいつも通りに幕を 開けたわけだ。
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