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下駄箱で靴を履き替える為に
一旦、菜摘と別れた。
この南陵高校、元は女子高だったのを、ムリムリに男女共学校に
改装した為、旧昇降口と新昇降口が校舎の西側と東側にある。
よってここから教室に行くまでの数分間が唯一、あの小煩い菜摘
から解放されるチャンスなのだ。
樹「──フリーダムッ!!自由を掴め!!」
……自分で叫びつつ、全く意味が分からないが。
この教室に行くまでのほんの数分間が、どれだけ心休まる貴重な
時間なのか……その重要性は計り知れない。
と、
樹「あん?」
──そんな短くも貴重な時間、
なのだが。俺はふと、視界に
それを見付けてしまった。
樹「なんでここに……?」
俺の下駄箱の隣には、柱が立っている。そして柱の前にはゴミ箱がある。
購買で買ったパンの包み紙やら、飲み終わったジュースのパックを捨てるために設置されたものだ。
その中に───
樹「……もったいないな」
何のことはない、普通の上履きがあった。
樹「……まったく。今の世の中、エコロジーだろ?まだまだ履けるじゃないか」
とか言いながら何気なく上履きを持ち上げた瞬間、
樹「!!いってぇ~~!!?」
爪の間に何かが刺さった様な、
鋭い激痛が走った。
条件反射で痛む指先を舐めようと口に運びかけたが、すんでの処で汚そうだから止める。
樹「……………」
引っ込めた手を恐る恐る伸ばし、壊れ物を扱うみたいに慎重に靴を観察してみると。
樹「………。クソが……」
靴の内側にテープで画描が留めてあることに気が付いた。
(ビリッ!!)
さすがの俺もなぜ画鋲が入ってたのかを瞬時に理解し、テープごと中の画鋲を引き剥がす。
と、
(パサッ)
中から落ちる、一枚の紙切れ。
俺は2つ折りに畳まれた紙を拾い上げると、慎重に開いてみる。
樹「………」
紙の側面には、剃刀の刃が裸で
留められていた。もし画鋲に気が付いても、刃に気付かなかったとしたら大怪我は必至だったろう。
樹「………」
紙は手紙になっている。
……否、それは間違いだ。
これは手紙なんてものじゃない。
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