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1st.day (0%) ~理を観る少女~
少年は、全てを失った。
──ごうごうと炎を吹き出すその光景は、少年の脳裏に家族で
キャンプに出かけた時の記憶を
よみがえらせていた。
父は釣った魚を焼き、母は娘の
食べる魚から骨を取っている。
娘は、母から受け取った魚を
美味しそうに頬張った。
そんな幸せな記憶とは裏腹に、
少年の目に映るのはただただ、
朱より赤い緋。
車の朱。血の赤。炎の緋。
少年は、全てを失った。
──そして、願った。
少女は、全てを呪った。
母の笑顔は、既に記憶にない。
父は元より、顔すら知らない。
そして自分も、笑顔の作り方を
忘れてしまった。
しかし皮肉にも、自分の名だけは覚えている。
クラスメイトも教師も、実の母ですら化け物と呼んでいるのに。
少女は、全てを呪った。
──そして、願った。
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