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(凄いものを見せてもらったな……)
エルフは感心しきっていた。
ここまでデッドハウンドの心に近づけた者ははたしていただろうか。
ただ単純に倒す、倒されるそういう関係でしか成り立たないと、そう思っていた。
(完敗だ……素直に敬意を払おう)
そうエルフは思った。
脱落種としてではなく、敬意を払うべく相手として接しようと。
月明かりの下、未だデッドハウンドと笑顔で戯れる少年に、エルフは自然と近寄っていく。
草を踏む足音が少年の耳に届いたのか、その音へと顔を向ける。
エルフは少年に笑顔を向け、声をかけた。
「傷は大丈夫──」
「うわっ!!」
エルフの心配する声を遮る少年の叫び声。
笑顔から一変、少年の表情は恐怖に満ちていた。
「逃げろーー!!」
エルフの目の前から走り去る少年。
その後を追い、デッドハウンドも消える。
少年にとって、デッドハウンドはただの大きい犬ぐらいにしか思っておらず、エルフと名乗る女性の方がよっぽど恐怖の対象になるらしい。
ぽつりと取り残されたエルフ。
少しの間、目の前の出来事に呆気に取られていたが、ようやく事態を理解したエルフの表情は鬼と化した。
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