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なぜ少年が涙を流すのか、まったく意味のわからないエルフはただその少年を眺めることしかできなかった。
風が木々を揺らす音は響き、太陽の暖かい日差しはただ黙って降り注ぐ。
「……ティッシュ一枚頂戴」
時間にして数分、エルフにしてみたら数十分、ようやく少年は落ち着く。
「ティッシュ?」
「鼻かみたい」
「あ、ああ。ちょっと待ってろ」
慌てて家へと入っていくエルフ。
なんだかんだ心優しく、少年の我が儘に対応する。
そして、家の中から持ってきたものを手渡す。
「葉っぱ?」
「いいからかめ」
少年は渋々葉っぱを鼻にあてる。
(あっ!柔らかい……)
その手の平大の緑の葉っぱは少年の想像を超える柔らかさだったらしく、気持ちよさそうに鼻をかんだ。
「ありがとう」
「…………聞きたいことがある。家に入れ」
エルフは答えも聞かず、家の中へと入っていき、少年も後に続いた。
そして、デッドハウンドも入ろうとしたがエルフが全力でそれを止めた。
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