2217人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「テレビもねぇ、電波もねぇ、ていうかそもそも携帯ねぇ、オラこんな所嫌だーオラこんな所嫌だー」
少年は、灰色のパジャマである長袖のスウェットのポケットを叩きながら、物凄く悲しくなる歌を歌い、森の中を歩いている。
最初は動かないほうがいいと考えたが、逆に動かなくては始まらないと、意を決して恐怖を感じながらも森の中に入っていった。
ちょうど歌も佳境に入り、少年のテンションが上がって来た所で、あるものを見つける。
「なんだ……これ……」
少年の目の前にある光景。
2mもあろうか、二つの頭を持つ、巨大な犬とも言えるものが、血溜まりの中、息絶えていた。
少年が辺りを見渡すと、木々は折れ、焼かれ、そして、所々に血が付着していた。
「なんだってんだ……」
少年は、いきなりの吐き気に襲われ、その場で嘔吐した。
知らない土地、理解不能の生き物、そして、その亡きがら、完全に少年の知らない世界の始まりだった。
最初のコメントを投稿しよう!