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エルフがまた戻ってくるのにはしばらく時間がかかった。
「ラティーシャよ……そう急ぐでない」
「ですが!」
道なき道を歩くラティーシャと老人。
老人の背はラティーシャの半分ぐらいしかなく、早足で歩く彼女を追うことは容易ではない。
ラティーシャ自身わかりきっていることなので反論することをやめ、歩幅を緩めた。
「……人間はラティーシャの家におるんじゃの?」
「はい」
「では、行くとするかの」
老人は目の前にある背の高い草を片手で退かすと、ラティーシャの家へと向かう。
そして、家へ着くとラティーシャより先に簾の中へと入る。
彼女も老人の後を追おうと簾に手をかけるが、それよりも先に簾はめくられた。
「ラティーシャよ……失敗じゃな……人間を一人置いてくるとは」
中には待っているはずの人間がいなかった。
愕然とするラティーシャを他所に老人は何かを言おうと口を開く。
「バウッ!」
が、口をそのまま、その声を聞き表情だけをみるみると変えていった。
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