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「なんだ、裏にいるのか……」
驚愕する老人を他所に、ラティーシャは声の方へ歩き出そうとする。
「待て!待たぬか!今の声聞こえなかったわけではあるまい!」
ラティーシャの服を引っ張り、静かに焦ったような声を出した。
ラティーシャはすっかり感覚が麻痺しているようだが、デッドハウンドに対するには命を懸けるべき相手。
何をどう説明すればいいかわからないラティーシャ。
その人間にデッドハウンドが懐き始めているなど言っても信じてもらえるわけがない。
論より証拠。
見せればまがりなりにも信じてもらえるかもしれない。
が、老人がここからさらに近づくとも思えない。
「お手!!」
「バウッ!」
「バウッ!じゃねーって!手をこう――」
そんな時だった。
裏から楽しそうな声が二人の耳に届いた。
「!?」
老人は訳がわからないといった表情をする。
それは当然のことであり、困惑するのが当たり前だ。
(このままでいれば、やがて長老自ら動くだろうな……私は動かない方がいい)
ラティーシャは声に釣られて長老が動くのを待つことにした。
「じゃあ、次は…………チンチン!」
その瞬間、老人の目の前からラティーシャの姿が消えた。
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