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私たちから少し離れたところに、小さな遊具が、3台ほどあるこじんまりとした公園があった。
水族館の裏手のせいか、
いたのは、一組の親子だけだった。
3才ぐらいの男の子が、
お母さんらしき女性とブランコで遊んでいた。
それを、私は幸せな気分に酔いながらぼんやり見ていた。
男の子が、何かに気付き、ブランコからひょいっと降りる。
駆け出したその先に、男性がいた。
男の子のパパなのかな…。
嬉しそうに男性に飛び付く男の子。
抱き上げた男性は、かなり若そうだった。
「英児、きてくれたの?」
綺麗な艶のある声が、響いた。
英児という名に聞き覚えのある私は、思わず彼の腕から身を起こした。
「久しぶり。会いたかった…。」
そういって歩み寄る女性を、
子供を抱えていない方の腕で、
英児と呼ばれた男は抱き寄せた。
女性が、男の頬にキスをする。
私はドキドキしながら、
その光景を食い入るように見つめていた。
その男は、やはり、知っている奴だった。
バイト先のライブハウスに出入りしてる高校生バンドのメンバーのひとりだ。
用事や予定のない日も、放課後はよく、入り浸っている、バンド馬鹿。
年下のくせに、私のこと、ちゃん付けで呼ぶ、生意気な奴。
ヤバい。
ヤバいもの見てるのかも。
だって、あれは明らかに、年上の女性で、
あいつは高校生で、
雰囲気は、内緒っぽくて…。
あまりにジッと見すぎていたのかもしれない。
彼が、私の様子を不思議がった。
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