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すぐ、返事がきた。
―いぶちゃんに、選択権はないよ(笑)―
「なんだとぉ!」
思わず声を上げた私を、一番上の姉、鈴音(スズネ)が一瞥する。
「いぶちゃん、仕事中でしょ。」
「ごめん、もう止める。」
私は慌ててジーンズのポケットに携帯電話を突っ込んだ。
「息吹、三番テーブルにカンパリソーダ追加。」
フロアーに出ている二番目の姉、雪(ユキ)からカウンター越しに言われ、
私は返事を返しながら、急いでカクテルを作り始めた。
私は週の半分、このお店で働いている。
昼間は喫茶店、夜はカクテルの飲めるお店として営業している。
八割がた女性客で、
今のところ従業員も女性に限定している。
私たち姉妹は、女子高から女子大に進学し、すでにその大学を卒業している。
基本的に男が苦手だ。
だから、なるべく女性が集まり易くて、気楽にお酒を楽しめる、そんなお店を開くのが夢だった。
姉妹でその夢を形にしだして二年あまり。
順調に軌道にのり、
当初の目的にかなり近い形で、
お店は営業している。
「お待たせしました。
カンパリソーダになります。」
働いている間にも、携帯電話のバイブが何度もポケットから振動となって、伝わってきた。
もう、しつこいなぁ。
今、この時間、私の本命の彼は、私がここで働いていることを知っている。
友人たちもだ。
だから、電話をかけてきているのは、英児、だろう。
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