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彼が取り出したのは、金色の指輪。
それを海斗に差し出す。
「特待生の証じゃ。おんしは編入試験を満点で合格したからの」
実際は、満点以上の回答だったのだが。
そのため歴代の最高得点は海斗のものへと変わり、今後はそうそう更新されることはないだろうと学園関係者は話していたりもする。
海斗は差し出された指輪を受け取り、右の人差し指へとはめる。
魔術が掛けられていたのだろう、やや大きめのサイズだった指輪は海斗の指に丁度良いサイズへと変化した。
「ふむ、こんなもんか。詳しいことはこの書類に書いてあるからの、目を通しておくとよいだろうて」
そう言って渡されたのは、厚さ五ミリの書類の束。
一番上には学園の地図らしきものがあった。
「分かりました。それではこれで失礼させていただきます」
丁寧に一礼すると、海斗は踵を返して扉へと手をかけた。
「おんし……」
まるで独り言にも近い学園長の言葉に、海斗の手が止まる。
「フィゾルは何も言わんかったが、一体何者じゃ?」
ノブに手をかけたまま、半身だけ海斗が振り返る。
そこに浮かんでいるのはその年には不釣り合いなまでの妖艶な笑み。
「ただの有翼人、ですよ。魔力が少なく、接近戦を好む変わり者ですが、ね」
そう言って、海斗は学園長室から立ち去った。
「ただの、の……やれやれ、ワシは駆け引きが苦手なのじゃがな」
溜め息混じりの学園長の声が部屋に響いた。
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