第二章

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  ガゼルが担任を務める2‐A教室。 「HR始めるぞー」 やる気の無さそうな声でガゼルが生徒達に呼び掛ける。 海斗は廊下にいるので様子はよく分からないが、ガタガタと音がしているため席に着いていない生徒が多かったのだろう。 「せんせー、編入生来るってマジですか?」 「男ですか?女ですか?」 「カッコいい人だといいなぁ~」 ザワザワと教室内が騒がしくなる。 様々な憶測が飛び交うのを聞いて、海斗は思わず苦笑を浮かべていた。 「お前等ちょっと黙れ。氷月、入って来い」 「はい」 生徒達の視線が扉に集まる。 静かに開いた扉から入って来た海斗は彼等の視線に怯む事無くガゼルの横へと進んだ。 「氷月海斗と申します。まだ分からない点が多いので御迷惑を御掛けするかもしれませんが、どうぞ宜しく御願い致します」 そう言って頭を下げて微笑む海斗から、誰も視線を外すことが出来なかった。 海斗は髪や瞳、翼だけでなく全体的に色素が薄い為、肌は驚く程に白い。 また線も細く、背はやや高めだが威圧感は無い。 むしろその柔らかな物腰と合わさって何処か儚げな印象を与える。 要はカッコいい、と言う言葉よりも美しい、綺麗と言ったようなものの方が似合うのだ。 「氷月の席は窓際の一番後ろな」 海斗に魅入っていた生徒達がハッと我を取り戻す。 ガゼルに示された席へと向かう海斗を皆が視線で追った。 歩く度に揺れる髪と翼。 まるで一種の芸術品のようだと思った生徒は少なくは無い。 海斗が席についた後、ガゼルが何かを話していたがそれを聞いていたのは一体何人だったのか。 大多数の生徒はHRが終わるのを今か今かと待ち、すぐに海斗の近くに行こうと待ち構えていた。 そして…… 「HRはこれで終わりだ」 ガゼルがそう言った直後、一斉に生徒達が海斗の周りを取り囲んだ。  
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