第二章

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  「(おやおや……)」 周りに集まったクラスメイト達に内心で苦笑する。 思うがままに質問する彼等の問いは幾つも重なり、聞き取ることさえ出来ない。 仕方無く、海斗は少し大きめに手を二回叩いた。 するとどうだろうか。 あれほど騒がしかった教室が一瞬にして静寂に包まれた。 「皆さんが私に質問なさりたいことがあるのは分かりましたが、一つずつにしてはいただけませんか?」 海斗の青年にしてはやや高めの、だが何処か落ち着いた声が響く。 「それもそうだよな」 「じゃあ少し質問絞らねぇ?俺が代表で聞くからよ」 「ならアタシ達も質問纏めましょ」 「それ良いわね」 男子と女子に分かれて質問を纏め、絞って行く。 彼等にとって幸いだったのは、次の授業が移動教室で無かったことだろう。 そして五分後、双方とも質問を絞り込めたらしい。 「じゃあ、まずは俺等からな。……氷月って、女?」 「…………」 無言のまま海斗が数日前ギルドマスターに向けたような笑みを男子達に向ける。 心無しか教室の温度が下がった気がしなくもない。 彼等はあろうことか、その一歩目で海斗の地雷を踏んでしまったのだ。 「私は列記とした男、ですよ」 海斗は笑ってそう言った。 だが後にクラスメイト達は語る。 あの時の海斗の背後には暗黒が広がっていた、と。 あの時の海斗の背後にはブリザードが吹き荒れていた、と。 そしてクラスメイト達は心に誓った。 海斗の地雷は踏まないようにしよう、と。  
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