39022人が本棚に入れています
本棚に追加
/354ページ
「(おやおや……)」
周りに集まったクラスメイト達に内心で苦笑する。
思うがままに質問する彼等の問いは幾つも重なり、聞き取ることさえ出来ない。
仕方無く、海斗は少し大きめに手を二回叩いた。
するとどうだろうか。
あれほど騒がしかった教室が一瞬にして静寂に包まれた。
「皆さんが私に質問なさりたいことがあるのは分かりましたが、一つずつにしてはいただけませんか?」
海斗の青年にしてはやや高めの、だが何処か落ち着いた声が響く。
「それもそうだよな」
「じゃあ少し質問絞らねぇ?俺が代表で聞くからよ」
「ならアタシ達も質問纏めましょ」
「それ良いわね」
男子と女子に分かれて質問を纏め、絞って行く。
彼等にとって幸いだったのは、次の授業が移動教室で無かったことだろう。
そして五分後、双方とも質問を絞り込めたらしい。
「じゃあ、まずは俺等からな。……氷月って、女?」
「…………」
無言のまま海斗が数日前ギルドマスターに向けたような笑みを男子達に向ける。
心無しか教室の温度が下がった気がしなくもない。
彼等はあろうことか、その一歩目で海斗の地雷を踏んでしまったのだ。
「私は列記とした男、ですよ」
海斗は笑ってそう言った。
だが後にクラスメイト達は語る。
あの時の海斗の背後には暗黒が広がっていた、と。
あの時の海斗の背後にはブリザードが吹き荒れていた、と。
そしてクラスメイト達は心に誓った。
海斗の地雷は踏まないようにしよう、と。
最初のコメントを投稿しよう!