第二章

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  矢をつがえることなく海斗は弓の絃を引く。 だが海斗は僅かに絃を引いただけで絃から指を離した。 それと同時に現れたのは一本の光の矢。 真っ直ぐに飛んだ矢はヴァースの頬に赤い線を引いて通り過ぎる。 「ガゼル先生、終了で宜しいでしょうか?」 リンクの上で弓をブレスレットに戻しつつ海斗がガゼルへと問う。 それに返って来たのは肯定。 海斗はリンクの端に向かうと、そこから飛び降りた。 着地した地点は村上や理恵、ルリの近く。 「よくもまぁ、使い方が分かったな」 「以前読んだ本の内容を思い出したものですから」 「本?」 ルリが首をかしげる。 「えぇ、あるトレジャーハンターが書かれたものの一節に書かれていたのですが、古の時代に作られたもののなかには、魔力に反応して作動するものがあったそうです」 「あ、それで海斗君も魔力を流してみたんだね?」 明るい笑顔を見せたルリに海斗が頷いてみせた。 「……っていうか、古の時代ってなによ?」 「えっと……私もよく、分かんないや」 えへへ、と笑うルリは何故か憎めない。 そんな彼女に理恵は溜め息をつき、答えを求めるように海斗を見た。 だが意外なことに、その問いに答えたのは海斗ではなく村上。 「古の時代ってのは、今はもう滅んじまった高い技術力を持った文明が存在してた時代のことを指すんだ。その時代が滅んだのは遥か昔だが、今でもその時代に作ってたのは少しだけ残ってて、確か帝も古の時代の武器を使ってるらしいぜ?」 「「……」」 ルリと理恵の二人が村上を凝視する。 「な、なんだよ……」 思わず後ずさった村上に、ルリと理恵が顔を見合わせた。 「そりゃぁ、ねぇ」 「うん……」 二人の間だけで成立するやりとり。 村上と、放置されている海斗は全く理解できない。 が、海斗は大体の予想がついていた。 まだあまり三人のことを知らない海斗だが、今までの遣り取りや授業での発言からルリはともかくとして、理恵と村上はあまり筆記の成績は良くないだろうという、少々失礼な考えがあったのだ。  
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