第十四章

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「うむ。ここから先は、ワシらの仕事じゃ。……おんしは、これからどうするつもりじゃ」 「得られる情報次第、ではありますが」 ちらりと海斗が見やったのは、取り残された飛鳥。 ガゼルが見張るように近くに立っているが、逃げるつもりも抵抗するつもりもないのか。 彼女は地面を見つめたままその場に座り込んだままだった。 「これからは帝として動くことになるでしょうね」 「ワシが聞きたいのはそうではない……と言っても、おんしは分かった上でそう言っとるんじゃろうな」 ドリュウが不服そうに眉を寄せたのは数秒のこと。 彼が諦めの溜息と共に吐き出した言葉に、海斗はただ微笑んだ。 そんな海斗の反応にドリュウは不満そうな表情を隠しもしないが、仕方ないとばかりに首を振ると傍のアテラへと視線を向ける。 「おんしはどうするつもりじゃ?」 「事態が事態だ。悪ぃが、後任が決まるまで学園にいるなんざ言ってられねぇ」 「となると、ガゼルもか。わかってはおったが、同時に教師が二人も抜けるとなるとちと頭が痛いわい」 米神を指先で揉み解すような仕草をしつつ、ドリュウが再度溜息を吐いた。 「じゃがまぁ、仕方のないことよな。おんしらは、おんしらのやるべき事に注力せい」 「言われるまでもねぇよ」 「はい、有難う御座います」 頷くという仕草こそ同じだが、対照的な態度の二人に小さく笑みを浮かべるも、再度旧友へと視線を向けて表情を曇らせた彼は、ゆっくりとした足取りで生徒や教員達の方へと戻って行く。 小柄な彼の背中が、いつも以上に小さく見えたのは気のせいではないのだろう。 「私達も、行きましょうか」 「帝の執務室で良いのか?」 「はい」 移転先を確認するアテラに一つ頷くと、生徒達――特に、海斗と関わることの多かったルリや理恵、ヴァース達の物言いたげな視線に気付きながらも、海斗はそれらを無視して背を向ける。 そしてガゼルに合図を送ると、飛鳥を閉じ込めていた氷の檻を消し去り、一足先に移転魔術でその場から姿を消した。
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