第三章

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  僅かな時間で、飛鳥の纏っていたローブは消え去り、彼女の素顔が露になった。 赤茶色の髪に、焦げ茶の瞳。 顔立ちからして、二十代の半ば辺りであろうか。 「さて、一般の方には御退室願いましょうか。明日にはもう貴女が光姫では無いことを多くの方が知ることになると思いますので、可笑しな考えは起こさないで下さいね」 「変な考えを起こしても直ぐに消すだけだがな」 踵を返して席へと戻る海斗の背を唇を噛み締めて睨む飛鳥を見下して、焔皇は嘲(わら)う。 いつの間にか飛鳥の回りの重力は元通りになっており、拘束していた蔦も跡形も無く消え去っていた。 「絶対に、後悔させてやるんだから…!!」 「おやおや、怖いですね」 「ほっほ、楽しみじゃの」 怒りで顔を歪ませる飛鳥を、わざと海斗とフィゾルが煽る。 それにさらに顔を歪ませると、彼女は荒々しい足取りで部屋を出て行き、扉を力任せに閉めた。 嵐が過ぎ去ったように、部屋に静寂が訪れる。 「音姫、大丈夫ですか?」 「え、えぇ…大丈夫よ。有り難う、帝」 音姫が力無く笑って、耳を押さえていた手を下ろす。 「…暫くは、いつもよりも念入りに、各自の担当する地域の様子を見なければならないですね。些細な事でも、何かに気付きましたら会議を待つこと無く個人で報告をお願い致します」 「うむ」 「「わかった」」 「「御意」」 「わかったわ」 六人が頷く。 その後、会議は再開され、終了したのは普段よりも三時間程遅れてからだった。  
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